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坪田さんの船


北海道札幌市にある宝流寺さまの報恩講のご法座に出講させていただきました。近隣の法中さまも多数出勤されていました。報恩講は一年で一番大切な法要、そんな思いでご寺院の方々、ご門徒のみなさも精一杯のおつとめをされていました。大変賑やかで厳かな法要でした。尊いご縁をいただきました。

そこで私にと頂戴したのが写真の船です。これは紙を折って作った船です。宝流寺さまの前住職と幼馴染の坪田マサ子さんが作られたものです。まずは紙を一枚ずつ短冊状にして貯めていくそうですが、まず材料を集めるのがとても大変だそうです。それもそのはず、集める紙の量もさることながら、お客さんの服装がなんと、みんな違うじゃありませんか。紙集めは量も種類も必要なのだと聞かせてもらいました。なんとか材料が集まってからも組み上げるだけで8時間近くかかることもあるそうです。こうしてできたのが写真の船だそうです。

どういったきっかけでこの船を作るようになったのかお伺いしました。あちこちへお聴聞にでかけられる坪田さんが、ある先生に「四十八願を作ってみてはどうか」と言葉を頂戴されたそうです。そこから試行錯誤された結果この形になったそうです。

数えてみると船に乗っているお客さんは48人なんです!四十八願とは、阿弥陀如来が法蔵菩薩であったころ、世自在王仏のもとで建てられた「私はこのような仏になりたい」という四十八の願いです。これらの願いを成就し阿弥陀如来となられ、生まれ変わり死に変わりずっと迷い続けてきた私たちが初めて救われてゆく機縁に恵まれたわけです。

生死の苦海ほとりなし
ひさしくしづめるわれらをば
弥陀弘誓のふねのみぞ
のせてかならずわたしける
(高僧和讃 龍樹讃)

私たちの抱える苦悩を「苦海」と表し、その苦しみをこえる手立てとして、阿弥陀如来の本願が「ふね」となり、必ずさとりの世界へと渡してくださることを、このご和讃は私たちに伝えてくださいます。

「弥陀弘誓のふね」に乗せられることにより「苦海」に沈むしかない私が、向こう岸へと渡ることができるのです。浄土への往生はすべて本願のはたらきによるものであると「ふね」から味わうことができます。誠に尊いことです。

船の先にいらっしゃる船頭さんは阿弥陀如来を表しているのでしょう。観音菩薩、勢至菩薩もいらっしゃいますね。最後尾のお方は釋迦如来でしょうか。仏さまに護られて、私たちはお浄土へと往かせていただくのですね。この船を眺めているだけで坪田さんのお念仏を慶ばれる心がひしひしと伝わってきます。

親鸞聖人は私たちが救われるには「念仏一つ」とおっしゃいました。南無阿弥陀仏の六字を称えなさいとおすすめくださいました。そんな思いからこちらの船には6人のお客さんが乗っていらっしゃいます。

たくさんの紙を使って四十八願を表した見事な船を作られる坪田さんですが、次の目標は組紐を一から学んで、手作りの修多羅(しゅたら=七条袈裟などを着用する際に背部に用いる組紐のこと)をお寺へ納めることだそうです。なんとバイタリティに溢れていらっしゃるのでしょうか。坪田さんから聞かせていただいたお話は、ますます精進せねばと感じ入るありがたいご縁となりました。

写真の船は無量寺にて大切に保管させていただいております。ご参拝の際ぜひ手に取って見てみてください。いつでもお声掛けください。

※坪田さんより承諾をいただいて掲載しています。


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